コールセンターの顧客サービススタッフの選抜
要約
この例はFacet5が、顧客サービス担当として適性のあるスタッフを選ぶために使用されたケースである。大きなコールセンターにおける「業績の良い人」とそうでない人との違いを調査した。調査結果によると、より業績の良いスタッフの特徴は以下の通りであった。
・ チーム指向である
・ 社交的である
・ 支援的である
・ 自制心がある
・ 仕事熱心である
これらの行動特性を基に「顧客サービス指数」が算出された。指数のトップの人は、一番指数の低い人に比べて約4倍高かった。
はじめに
多くのコールセンターでは、スタッフの離職率が高いことで悩んでいる。年間30−40%の離職率は一般的であり、中にはもっと高い場合も多く存在する。この高い離職率にかかるコストは莫大で、企業の収益性に大きな影響をもたらしている。世界の多くの研究によると、1人のスタッフを入れ替えて、一人前にするためにかかるコストは最低でも年間のサラリーは必要とのことである。例えば、1000人のスタッフを抱える大きなコールセンターで、年間30%の離職率の場合は300人分のサラリーが余分なコストとしてかかっている。1人の年収を300万円とすれば、この企業は年間9億円もの利益を失っているのである!こうした直接的な利益損失のほかにも、間接的な影響として、モラルの低下や未経験者の採用による生産性の低下もある。
職場環境を改善するために多くの努力がなされ、多くのコールセンターでは、職場環境をより向上させるための様々な経営改善がなされている。しかし、問題は解決されていない。
人には「生来の」性質があり、コールセンターで働くことが合っている人々がいると言われる。もし、そうであるならば、その人たちが、離職してしまう人々や、業績の上がらない人たちとは異なる「性格」や「行動特性」を持っていることと関連付けられるはずである。
本レポートの目的は、コールセンターにおける優秀なスタッフの「特徴」を捉え、それをあまり業績の上がらないスタッフとの違いを明らかにすることである。
サンプル
主要なコールセンターのスタッフの中から93人が、本調査目的のために選ばれた。彼らの仕事は、顧客からの要望や情報提供のリクエストに応えることである。93人のうち30人は「業績の高いスタッフ」として認定されていた。サンプルの構成は以下の通りである。
業績 | |||
高い | その他 | 合計 | |
スタッフ人数 | 30 | 63 | 93 |
分析
分析は下記に記すステップで行われた。
データの検証
回答者の解答が、中心値(即ち解答3、「どちらともいえない」)に偏っていないかが検証された。解答の中に余りにも3が多い場合は、サンプルから除外された。この理由は、そうしたプロファイルは平準化されて、本来あるべき特徴が隠れてしまうからである。検証の結果、9人がサンプルから除外され、上記のサンプル数となった。
業績の高いスタッフとそうでないスタッフのFacet5の5つの要因における違いを見つけるために一連の統計分析が実施された。
結果
顧客サービスセンターの中で、業績の高いスタッフは、自律性「」のスコアが高く、また思いやりがあり、人への関心が強かった。更に細かく特徴を把握するために、Facet5の副要因を見たところ、業績の高いスタッフは、独自性が強くなく(即ち、チーム指向で)、社交的、支援的で、自制力があり、仕事熱心であることが特徴であった。下図はこれらの差を、チャートで示したものである。
このチャートから、自律性に関しては、規律と責任のr2つの副要因とも、また、意志、外向性、配慮に関しては、それぞれ1つづつの副要因が業績にリンクしていることがわかる。
データから予測できること
このリサーチでは、業績の高いスタッフと関連があるであろうFacet5のスコア・パターンを見た。理想のプロファイルから離れれば離れるほど「業績の高いスタッフ」である可能性が低くなることは明らかである。従って、「理想プロファイル」からどれだけ離れているかを測定するフォーミュラを作成した。 この「乖離度」を各々のスタッフ別に見た。「乖離度」が小さければ小さいほど、理想プロファイルに近く、従って業績の高いスタッフである可能性が高いと考えられる。逆に、「乖離度」が大きければ大きいほど、理想プロファイルからは遠く、業績の高いスタッフである可能性が低いと考えられる。わかりやすくするために、乖離度に基づいて、全体を「サービス・バンド」と呼ぶ5つのグループ(20%ずつ)に分けた。サービス・バンドが低いほど、スタッフの業績が高い可能性は低くなる。
以下の表に見られるとおり、「業績の高いスタッフ」の割合は、サービス・バンドが高くなるほど、大きくなっており、「業績の高いスタッフ」の割合がバンド5では、バンド1の4倍もいることがわかる。
顧客サービス・チーム | |||
サービス・バンド | スタッフ数 | 「高業績」の スタッフ数 |
「高業績」スタッフ の割合(%) |
1 | 19 | 3 | 16 |
2 | 18 | 4 | 22 |
3 | 19 | 6 | 32 |
4 | 19 | 7 | 37 |
5 | 18 | 10 | 56 |
合計 | 93 | 30 | 32 |
Facet5使用の意義
本分析が有意義なものであるか否かを判断するためには、この結果がもたらすであろう成果を考えなければならない。もし、この手法が採用時に行われれば、選考過程に非常に大きな影響を与えるであろう。現在では、成功率(業績の高いスタッフの全体に対する割合)は、32%である(93人中30人)が、Facet5が選考の初期の段階で使用され、バンド1から3のスタッフが除かれていていれば、成功率は平均で46%(37%と56%の平均)に上昇すると予想できる。即ち、インタビューすべき人数が60%も減らすことができ、当然のことながら、それに関わる経費の節減にもつながる。